35.スウェーデン
1.報道内容に対する監視機構と罰則規定等について
スウェーデンは、表現の自由に関する法律(Yttrandefrihetsgrundlag (1991: 1469)) により、スウェーデンの国民の表現の自由は保障されており公的機関が公衆による出版,発言,情報発信の禁止や意見の表明を妨げる事は禁止されている。検閲やその他予防措置も禁止されており、報道に関しては表現の自由が毀損された場合は番組放送後6ヶ月以内に公訴の提起が可能である。
但し、他国と同様に完全な表現の自由が保障されているわけではなく、個人の人種や政治的意見、宗教的信念及び哲学的信念、健康情報や労働組合の構成員等の個人情報の開示を禁止する規則に抵触するものや、18歳未満の猥褻画像(所謂児童ポルノ)、国防を棄損する可能性のある情報、訴状等の職業的守秘義務情報、他の特別法に干渉する表現は規制されている。
また、報道自由規則(Tryckfrihetsförordning(1949:105)) により、すべてのスウェーデン国民は報道の自由の権利を有する。普遍的な自由の原則に従い、自由な意見と情報の交換を確保することを妨げることはできないほか、検閲の禁止が明示されている。
但し、表現の自由に関する法律と同様に無制限な自由が保障されているわけではない。著作権や著作人格権に反し著作権者の利益を害することや、酒類や煙草製品等の商業的広告の禁止、欧州共同体規則に反する健康、環境保護に反する商業広告の禁止、信用情報開示等の禁止、18歳未満の狼費画像の禁止等が定められているほか、特別法に定められた意図的な機密保持の違反等は禁止されており、報道の自由の濫用には罰則も設けられている。
特に、防衛,兵器,貿易,その他スウェーデンの安全保障を脅かす可能性のある情報の開示や盗聴(試みや準備を含む)等の機密保持に対する不正行為、戦時における虚偽の噂を広める等の争乱行為及び利敵行為全般、スウェーデンまたはその一部を強制力のある方法や合法的な手段或いは外国の援助により外国人の支配下におこうと意図したり、スウェーデンの主権を奪いスウェーデンの一部を放棄させようと意図した情報操作などの侵略幇助行為、外国の援助により戦争その他スウェーデンへの敵対行為が引き起こされる危険性を伴う情報操作や思想誘導、国家への反逆の煽動に結びつく表現にに関しては法律で処罰される。また、人種・民族・信念、その他の嫌悪感の増大を試みること、世論形成に影響を与え政治組織や企業団体に違法な威圧を与え行動や集会・意見表明の自由を奪うこと、暴力行為を推奨するような描写、侮辱虐待等の肯定及び恐喝に該当する表現等に関しても法律で処罰される。
なお、これらとは別に特別法として放送法(ラジオ及びテレビ法)(Radio-och tv-lag (2010:696))がある。
表現の自由に関する法律(Yttrandefrihetsgrundlag (1991:1469)) や報道自由規則(Tryckfrihetsförordning(1949:105)) が、報道の自由の権利の確保とその範囲の規定が中心であるのに対し、放送法(ラジオ及びテレビ法) (Radio-och tv-lag (2010:696)) は放送全般についての様々な規定を行う。
オンデマンドTVを含む全てのテレビ放送等のメディアサービスプロバイダーは、番組全般が民主的国家の基本思想と国民の平等、個人の自由と尊厳の原則に従う必要がある。また、一般テレビ放送では、猥褻(わいせつ)な画像を含む場合は放送前に警告を発するか、放送中に連続して警告を表示する必要があるほか、オンデマンドTVであっても深刻な暴力や猥褻画像を含む番組は、正当化に足る特別な理由がない限りは子どもが視聴する可能性がある状態で提供してはならない。
また、年開放送時間の半分以上は欧州起源の番組である必要があるほか、年間の番組予算の少なくとも10%は独立した生産者が制作する欧州起源の番組である必要がある。なお、この欧州起源の番組には、ニュース、スポーツ、各種競技、広告、販売番組を含めることはできない。
スポンサーシップについても様々な規定がある。主にニュースやニュースコメントを含むテレビ番組のスポンサーになることはできないほか、スポンサーは番組の編集上の独立性に影響を及ぼしてはならない。
酒類・煙草製品・電子煙草及詰替えカートリッジ等を主事業とするメーカーもテレビ番組のスポンサーにはなれない。また、乳児用調合乳を製造または販売する企業が番組のスポンサーをする場合は、乳児用調合乳の使用を促進することはできないほか、製薬会社が番組のスポンサーをする場合も処方薬の促進をしてはならない。
テレビ放送の広告については、テレビショッピング専用番組を除き、1時間当たり最大12分に限定されており、12歳未満の児童を主目的とした宗教サービス等の番組は広告によって中断されてはならず、一般の番組に於いても番組中の自然な切れ目や番組の完全性や価値及び著作権利者の権利を侵害しない判断される場合を除き、広告により番組を中断してはならない。
広告は、番組の内容と完全に区別できる音と映像による署名を行う必要がある。
また、広告は、12歳未満の子どもの注意を引くことを目的としてはならず、主に12歳未満の子どもを対象とした番組中及び直前、直後には広告を入れてはならない。
酒類・煙草製品・電子煙草及び詰替えカートリッジの広告は、アルコール法(alkohollagen (2010:1622))、タバコ法(tobakslagen(1993:581))、および電子タバコおよび詰め替え保護法(lagen (2017:425) om elektroniska cigaretter och påfyllningsbehållare.) により広告が禁止されており、ゲームの広告もゲーム法(spellagen(2018:1138).) により禁止されている。
幼児用調合乳の広告については幼児用調合乳の販売に関する法律(lagen(2013:1054) om marknadsföring av modersmjölksersättning och tillskottsnäring.)により規定があり、医薬品については医薬品法(läkemedelslagen(2015:315).) に規定されている。
テレビ番組及びラジオ番組の規則違反は、放送法(ラジオ及びテレビ法) (Radio-och tv-lag (2010:696))の規定により、ラジオとテレビの様々なルールに関する指針を決定するラジオ・テレビ審査委員会(Granskningsnämnden för radio och tv) により審査されるほか、違反等の申告は広く一般視聴者が行えるようになっており、申請書を用いるか、郵送、ファックス、電子メール及びウェブサイトにある報告フォームから審査の申請可能である。申請はプログラム及び放送チャンネル、放送日、申告内容と、氏名及びメールアドレスまたは郵便南郷等が必須で、あり、匿名での申請はできない。
ラジオ・テレビ審査委員会は申請に対し3か月以内に何らかの返答をする必要がある。
審査対象となるメディアは、スウェーデンから放送されている公共サービスチャンネル、地上ネットワークチャンネル、ケーブルテレビ、衛星放送テレビ、PPVテレビ、Webテレビ、商業ラジオ、コミュニティーラジオ、Webラジオであり、インターネット関連のメディア及び電波放送に関しても地理的条件により英国やオランダの一部放送が視聴可能であるが、これらの放送はスウェーデンで、視聴可能であっても外国の放送局によるものは審査対象とはならない。
ラジオ・テレビ審査委員会は、一般視聴者からの申請に対し放送プログラムが何らかの条項に違反しているかどうかを判断し、有効な申請に対しては各種処罰や修正を指示すると共にその内容が公表される。また、不公平な宣伝や広告及びスポンサーシップに関する規則に違反した場合、スウェーデン行政裁判所は違反の性質や軽重及びその期間等を考慮し、5,000SEK(約6万3000円) から5,000,000SEK(約6300万円) までの罰金が科せられ、この決定の効力が生じた後30日以内に支払う必要がある。但し、その金額は当該メディアサービスプロバイダーの全事業年度の年間売上高の10%を超えてはならない。
これらとは別にマーケティング法(marknadsföringslagen(2008:486)) により消費者に対し不公正な広告とみなされた場合には、同法第29条から第36条の規定に定める罰金が生じる。
なお、更に重大な違反と見なされた場合は放送ライセンスが取り消される場合がある。
表現の自由に関する法律(Yttrandefrihetsgrundlag(1991:1469))の詳細については以下のWebサイトを参照
報道自由規則(Tryckfrihetsförordning(1949:105)) の詳細については以下のWebサイトを参照
放送法((ラジオ及びテレビ、法)Radio-och tv-lag (2010:696)) の詳細については以下のWebサイトを参照
ラジオ・テレビ審査委員会(Granskningsnämnden för radio och tv) のメディアの影響に関する指針(GranskatKlart Tema -reklam,sponsring och otillbörligt gynnande)の詳細は以下のWebサイトを参照
ラジオ・テレビ審査委員会(Granskningsnämnden för radio och tv) の公平性に関する指針(Granskat Klart Tema -om mediets genomslagskraft) の詳細は以下のWebサイトを参照
ラジオ・テレビ審査委員会(Granskningsnämnden för radio och tv) の広告、スポンサーシップ、不公平な宣伝に関する指針(Granskat Klart Tema -reklam,sponsring och otillborligt gynnande) の詳細は以下のWebサイトを参照
http://www.mprt.se/documents/publikationer/gok%20tema/granskat_klart_sponsring-reklam-2015.pdf
ラジオ・テレビ審査委員会(Granskningsnämnden för radio och tv) の一般視聴者報告フォームは以下のWebサイトを参照。
http://www.mprt.se/att-anmala/anmal-program/anmalan/
2. クロスメディアオーナーシップ等の報道機関の一定地域における情報提供の占有や支配に関する各種規制について
電子通信法(電子通信に関する法律(Lag(2003:389) om elektronisk kommunikation)) の規定により、市場における効果的な競争が確認されない限りライセンスの移転が可能であるが、放送法((ラジオ及びテレビ法)Radio-och tv-lag (2010:696)) の規定により競争に影響があると判断される場合は放送ライセンスが取り消される場合がある。
具体的には、既にテレビ放送ライセンスを有する者が当該地域のラジオ放送の免許を申請した場合は、他の免許を所持しない別の申請者が優先される場合があるほか、同様に新開発行者がその新聞の流通地域においてラジオ放送の免許を申請した場合はテレビ放送ライセンス所持者の場合と同様に却下される場合がある。
このように、新聞及びアナログラジオに関しては前記の様にクロスメディアオーナーシップを妨げる場合があるが、それら以外に関しては原則としてメディアの所有権を妨げる規制は設けられていない。
・外資規制等について
衛星放送を含むすべてのTV放送に関しては特に制限は設けられておらず、ラジオに関しても同様である。新聞に関してのみ、EU以外に本社を持つ新聞社の新聞は発行が許可されない場合がある。
3. 電波オークション制度について
電子通信法(電子通信に関する法律(Lag(2003:389) om elektronisk kommunikation)) の規定により無線送信器を使用する者は、警察、治安部隊、軍隊、軍隊のラジオ局を除き、ライセンスが必要である。
ライセンスは、有害な干渉が無くスペクトルの効率的な使用と重要な無線通信を妨げず、国際協定に基づき採択された規則に従い既存及び新規のラジオの使用またはスペクトル開発のための必要な周波数スペースを確保するために必要に応じ制限される場合がある。また、ライセンスは一定期間付与されるものであり、諸事情により短縮される場合があることが規定されているほか、同第23条により要件を満たした場合は当局の同意を得た上でライセンスの譲渡が可能である。
電子通信法(電子通信に関する法律(Lag(2003:389) om elektronisk kommunikation)) の詳細については以下のWEbサイトを参照
・オークション等実施例
・2007年11月に実施された3.4GHz~3.8GHz電波オークションの一部プロセスとして割り当てられた3.6~3.8GHz帯の地方自治体ライセンス電波オークションは、合計1160ライセンスのうち402ライセンスが落札された。
・2008年3月に実施された1.9GHz帯(1900MHz~1905MHz) の電波オークションは、1通信事業者により60,100SEK(約75万円)で落札された。
・2009年8月に実施された28GHz帯の2×28MHz帯域×18チャンネルの電波オークションは、3通信事業者により910,007SEK(約1150万円)で落札された。
・2011年3月に実施された800MHz帯(791MHz~821MHz及び832MHz~862MHz)の2035年12月末迄有効の電波オークションは、3通信事業者により2,054,000SEK(約260億円)で落札された。
・2011年に実施予定だった2GHz帯(2010MHz~2025MHz) の電波オークションは、EU委員会による周波数バンド使用調整プロセスが実施されたため、2011年11月にキャンセルされた。
・2011年12月に実施された10.5GHz帯(10210MHz~10294MHz及び10560MHz~10 644MHz)の2011年11月から2035年12月末迄有効の電波オークションは、1通信事業者により3,957,300SEK (約5000万円)で落札された。
・2015年12月に実施された2.6GHz帯(2500MHz~2690MHz) の電波オークションは5通信事業者により2,099,945,000SEK(約263億円)で落札された。
・2015年12月に実施された900MHz帯(880MHz~915MHz,925MHz~960MHz)の2×35MHz帯域の電波オークションにより権利は関連別会社に移行された(なお、当該周波数帯は2009年の延長要求によりライセンスは2017年5月末及び2010年12月に有効期限切れの予定だったものが2025年12月末まで延長された)。
・2018年2月に実施された450MHz帯(452.5MHz~457.5MHz及び462.5MHz~467.5MHz)の2020年3月5日から2044年12月末迄有効の電波オークションは1通信事業者により40,167,000SEK (約5億円)で落札された。
なお、これらの電波オークションに加え2019年以降に2.3GHz帯、3.5GHz帯等のオークションが予定されている。。
2007年11月の3.6~3.8GHz帯の地方自治体ライセンス電波オークションの詳細は以下のWebサイトを参照
2008年3月の1.9GHz帯の電波オークションの詳細は以下のWebサイトを参照
2009年9月の28GHz帯の電波オークションの詳細は以下のWebサイトを参照
2011年12月の10.5GHz帯の電波オークションの詳細は以下のWebサイトを参照
2011年3月の800MHz帯の電波オークションの詳細は以下のWebサイトを参照
2015年12月の2.6GHz帯の電波オークションの詳細は以下のWebサイトを参照
2015年12月の900MHz帯の権利移行電波オークションの詳細は以下のWebサイトを参照
https://www.pts.se/contentassets/2ebee58918874541bf9b554c6ce63216/08-12019-beslut-900mhz-090313.pdf
2018年2月の450MHz帯の電波オークションの詳細は以下のWebサイトを参照
https://www.pts.se/sv/nyheter/pressmeddelanden/2018/nettett-vann-auktionen-i-450-mhz-bandet/
PTS実施の電波オークション一覧の詳細は以下のWebサイトを参照
https://www.pts.se/sv/Bransch/Radio/Blocktillstand/
4. 電波使用料等について
電波使用料(手数料) は税法(avgiftsföreskrifter) により定められており、PTSの管理活動に用いられる。手数料はPTSにより市場データ予測等を判定し毎年調整される。
2019年の税規則の詳細は以下のWebサイトを参照
5. その他資料等
・監査機関等
テレビ・ラジオを含むメディア全般の政策と管理は文化省(Kulturdepartementet)が管轄し、インターネット全般の管理や、携帯電話、テレビ放送・ラジオ放送、及び近隣諸国とのディジタルテレビ及びラジオの周波数調整、電波オークション等を含む電波行政全般は郵便電気通信庁(Post-och telestyrelsen)が統括管理する。
テレビ・ラジオ等の報道に対する直接的な管理と支援は文化省の下部組織である報道ラジオ・テレビ局(Myndigheten för press radio och tv) が実施し、広告を含むコンテンツ全般のの内容についての検討や視聴者からの苦情処理等はラジオ・テレビ審査委員会(Granskningsnämnden för radio och tv)が実施する。
参考資料:デンマーク 受信料廃止(NHK)
https://www.nhk.or.jp/bunken/research/oversea/pdf/20180901_6.pdf
(※リンク先が調査時(2017~2018年)から変更になっている場合は、各機関のHPルートに接続します)
世界主要国の通信放送等に関する調査報告書 44
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