30.ナイジェリア
1.報道内容に対する監視機構と罰則規定等について
報道に関する規制と監督及び免許付与と、放送に関する苦情等の処理は国家放送委員会(National Broadcasting Commission NBC) が実施することが国家放送委員会(改正)法に定められている。また、規制の方向性と内容についてはナイジェリア放送コード(NIGERIA BROADCASTING CODE) に定められている。
一般的な国の放送コードが放送内容についての視聴覚制限等のガイドライン及び制限区分をまとめたものであるのに対し、ナイジエリア放送コードは視聴覚制限のガイドライン的な内容に加え、放送に関する広く一般的な内容も包括している。
放送コードの規定により、ナイジエリアの放送は1999年憲法第二章に準拠し、多様性や社会的、文化的、政治的、宗教的な面における国益や団結、結束を損ねてはならないと定められている。
これらの理念を実現するため、放送は公共の利益に反することや公衆の感情に嫌悪感を抱かせること、扇動、個人に対する攻撃や、人間の尊厳を損ねる行為は禁止されている。また、社会的価値観や各種規範と市民の知識の獲得を推進と身体的、精神的、社会的福祉の促進、自己規律と自主の精神の養育、人間の尊厳の尊重と公共の利益の追求を目標としているほか、それぞれの分野における目的を明記している。
文化的目的として、美意識や宗教、倫理、哲学、言語、歴史、芸術等を含む多様な文化の保存と促進に加え、政治的、社会的、経済的、道徳的側面の強化と、先住民の美的価値の保護と促進を、経済的目的として、統一され強く自立した国家と、平等で力強し、経済の推進のため、放送や広告を通じ製品やサービスの告知と促進、生活の質の向上のための生産性の精神を涵養し、地元産物の生産と消費を奨励している。
政治的目的として、放送は国家団結と民主主義の発展に貢献する義務があり、そのために人々の政治意識を推進し、多くの意見を取り入れる寛容さと、社会における個人の責任と社会正義を推進している。
技術的目標として、国家の豊かな自然と人的資源の活用のため、技術開発と科学技術の促進と科学的で合理的な思考を促進している。これらの目的及び目標を実現するため、報道機関の役割は重要で高度な専門性を必要としており、報道機関の要職に就く者に対する経験や教育レベル等についての指針が設けられている。
放送規制の目的も、放送が憲法の規定にある人の尊厳、民族的・道徳的・社会科知的な合法性と、真実性、誠実性、礼儀正しさ等を尊重する一般原則に従い、社会的、文化的、政治的に生活の中心的な役割を果たすことを保証するためのもので、規制が国際的な基準のみならず地域の需要に合致するよう配慮する必要がある。放送内容による犯罪の誘因の可能性を排除すると共に、児童等の特別な配慮が必要な者の保護育成も考慮されている必要がある。これらのために自主規制の採用と、苦情等に対処する仕組みが必須となっている。それらを実現するため、放送事業者は四半期ごとに放送番組の概要を委員会に通知する必要があり、公開した番組表の内容を遵守する義務がある。番組内容を変更する場合は事前に告知を行う必要があり、番組を中止する場合も同様である。なお、放送内容は最低90日間の保存が義務付けらているほか、国家放送委員会(NBC)の要請に応じてそれらの記録を提出する必要があり、放送内容により被害を受けた者は14日以内に委員会に対し苦情を申し立てることが可能であり、国家放送委員会(NBC)は放送事業者に対し72時間以内に書面による返答と関連資料の提供を指示することができる。苦情が正当なものであった場合は、24時間以内、またはシリーズ番組の場合は次回放送時に訂正放送を行う必要がある。
禁止事項はCLASSA、CLASSB、CLASSCの3段階に分類されており、放送開始時にこれら放送コードを明示する必要がある。
具体的な放送内容の禁止事項としては、放送で提供させる情報は正確で公正、信頼できる内容である必要があり、架空の事象や事実ではない内容を事実或いは現実として提示することは禁止されているほか、エクソシズム、オカルト、超常現象等についても同様に禁止されている。また、放送に於いてはプライバシーや著作権、名誉棄損等に関する法律を遵守し、猥雑、下品、不敬、残虐行為の禁止と、利己主義、復讐、酔っ払い、薬物中毒、強盗、姦通、売春、獣姦、同性愛、レズピアン、近親相姦等の表現の禁止、肉体的苦痛や痛みの過度な表現の禁止、結婚や家族生活の尊厳の尊重と推進、飲酒と喫煙、性的シーンはストーリー上必然である場合のみ表現が可能で、自殺は許容可能な問題解決策として描かれてはならないほか、子供が影響を受けやすい道徳的・心理的に害のある暴力・残酷・苦痛・恐怖の描写は22時以前の時間帯には放送が禁止されており、これらの放送は22時----5時の間のみに例外的に許可されている。
また、ナイジェリア人かつナイジェリア居住者、或いはナイジェリア人主体で作られたローカルコンテンツ放送推進政策が執られており、音楽作品に於いても同様である。このため、地上波放送では、全音楽放送の80%が、歌詞・音楽がナイジェリア人によるもの、演奏が主にナイジェリア人、演奏がナイジェリアで行われているという条件のいずれかを満たしたナイジェリアの音楽である必要があるほか、外国のコンテンツや番組を放送する場合であっても、本質的にナイジェリアに関連していることと、ナイジェリアの発展に必要で文化的感性を尊重されているもの、或いは、健康や農業・技術等の分野における教育番組に関するものにおいて15%が許可されている。なお、地上波放送に関しては、外国放送の生放送は特別な宗教、或いはスポーツ番組、明らかに国益に寄与する番組以外は禁止されている。
多民族・多宗教国家であることを反映し、宗教番組についても様々な規定が定められており、同地域におけるすべての宗教団体に公平な放送時間とその機会を与える必要があり、宗教的番組は敬意を払い正確に提示し、番組内容は信条に限定され公衆を欺く、或いは扇動する内容は禁止されている。また、他の宗教や宗派に対する攻撃や剛笑は禁止されている。
宗教放送は週放送時間の20%を超えてはならない規定がある。
ニュース番組に関しては、正確且つ公平な方法で提示し、誇張や虚偽の表現、重要な内容の省略や要約等は禁止されているほか、ニュース解説・ニュース分析・時事プログラム・論説番組等のニュース番組(ニュース及びニュースに基づく番組)では、完全性を損なう可能性のあるスポンサーシップは、商業的背景の使用も含めてスポンサーに有利な偏向が行われることを防ぐため禁止されている。また、ニュースや最新報道は、生中継・録画に限らず主題に精通し問題の全側面を理解していることが基本であり、間違い等に関しては素早く訂正される必要がある。
ニュースと、その解説・分析・論説は明確に識別されるようにしていなければならないほか、ニュース資料の再構成は禁止されている。
なお、一般地上放送局は放送時間の20%以上をニュース及びニュース番組に割り当てる必要があり、ニュース報道を中心とした放送局は70%以上がニュース等でなければならない。また、地上放送では外国のニュースコンテンツのライブ中継が禁止されている。
なお、公用語は英語であり、外国語の番組は基本的に公用語の字幕が必要であり、ローカル言語であるナイジェリア語の番組で、あっても全国放送の場合は公用語の字幕が必要となる。
違反に対する罰則には、その重要度に合わせ書面による警告から、罰金、放送免許の一時停止、放送免許の一定期間停止、放送免許の取消の処置が執られる。
罰金には非常に細かい規定が定められており、軽い違反は₦50,000~₦499,999 (約15000円~15万円)の範囲で、重い違反は₦500,000~₦1,999,999(約15万円~60万円)の範囲で、厳重な違反は₦2,000,000~ (約60万円~)と定められており、更に宗教放送の制限を超えた違反は1%ごとに₦50,000,000(約1500万円)の罰金が、外国放送の超過は1%ごとに₦100,000,000(約3000万円) の罰金が科される。
なお、有料放送に於いても、番組の概要は開始2週間前に委員会に提出が義務付けられているほか、児童及び青少年に適さない番組は21時以前に放送することは禁止されており、外国のコンテンツが80%以下である必要がある。
広告については、その内容や指針等は一般放送プログラムと同様に法的・倫理的規範の遵守に加え、広告主の明示と、広告時間は30分の放送では6分未満、60分の放送では12分以下であり、いかなる誇大広告も禁止され、広告内で統計資料を用いる場合は正確を期す必要がある。また、広告により提供される製品またはサービスは広告内容と等しい必要があり、競合製品等の不当な攻撃や侮辱等の内容を含んではならない。広告基準による認証を受けない限り、ベスト、最優秀、ナンバーワン等の最上級的な表現及び、マジカル、奇跡等の表現は使用できない。また、爆薬・銃器、占いや占星術等の実践に関する広告や迷信等に訴える広告、スクロールバーを用いた広告は禁止され、アルコールの広告は児童・青少年を対象とした番組と、スポーツ番組に隣接して放映されてはならない。医療及び医薬品に関する広告と、賞品等の広告は許可が必要である。
また、児童や青少年を対象とした広告では、それらに対する搾取の可能性があるものは禁止されているほか、身体的・心理的に害を粛す可能性のあるものは禁止され、さらに児童が広告された商品を所有しないことによる軽蔑又は噸笑を避ける配慮が必要である。
放送事業者は、これらの広告基準に違反した場合、₦500,000~₦1,000,000 (約15万円~30万円)の罰金または放送免許取消となる場合がある。
なお、電気通信関係は、2003年ナイジェリア通信法(NigerianCommunications Act 2003 NCA2003) に基づき罰則や罰金等の規定が設けられている。
国家放送委員会(改正)法1999年第55号(NationalBroadcasting Commission CAmendment) Act No. 55 of 1999) の詳細は以下のWebサイトを参照
http://www.lawyard.ng/wp-content/uploads/2016/01/NATIONAL-BROADCASTING-COMMISISION-ACT.pdf
ナイジェリア放送コード第5版(ドラフト版)(NIGERIA BROADCASTING CODE (5TH EDITION,2010)DRAFT)は下記のWebサイトを参照
https://nlipw.com/wp-content/uploads/DRAFT-Nigeria-Broadcasting-Code_5th-Edition-2010.pdf
ナイジェリア放送コード第6版(NIGERIA BROADCASTING CODE (6TH EDITION,2016))は下記のWebサイトを参照
https://www.nta.ng/wp-content/uploads/2019/09/1494416213-NBC-Code-6TH-EDITION.pdf
2. クロスメディアオーナーシップ等の報道機関の一定地域における情報提供の占有や支配に関する各種規制について
ナイジェリアのメディアは長く政府管理下にあったが、1992年の放送法第38条の規制緩和と1999年の民主化以後はメディアの私有化が認められた。但し、国家放送委員会(改正)法1999年第55号の規定により宗教組織及び政党には放送免許は与えられないほか、2つ以上のテレビ放送局を同時に所有することはできない。
・外資規制等について
国家放送委員会(改正)法1999年第55号の規定により、放送免許団体はナイジエリア国民が過半数を所有している必要がある。
ナイジェリアのメディアオーナーシップに関する歴史的経緯は、ナイジエリア大学(Unicersity of Nigeria) のMichaelo. Ukonuの論文に詳しい。以下のWebサイトを参照
3. 電波オークション制度について
周波数管理方針(FrequencyManagement Policy)に基づき、ナイジエリア通信委員会(The Nigerian Communications Commission NCC)により効率的な電波資源と社会経済目標に対する相対的な重要性と将来予測に基づき周波数利用計画が立てられ、電波帯活用と通信業界の発展促進と公正な手段での周波数割当の実現を目的に電波オークションが行われている。
・オークション等実施例
・2007 年の事前資格審査及び₦40,000,000 (約1200万円) のインセンティブデポジット付の800MHz帯、3.75MHz幅の5年間ライセンスの電波オークションでは4事業者の入札があった。
・2007年の事前資格審査及びインセンティブデポジット付の2GHz帯、10MHz幅の電波オークションでは4事業者の入札があり、$150,000,000 (US$) で落札された。
・2013年----2014年の2.3GHz帯、30MHz幅の10年間のライセンスの電波オークションは、予備価格は$23,000,000(US$) に設定された。
・2015年の2.6GHz帯、140MHz幅(5MHzX2を1スロットとした14スロット)の10年間のライセンスの電波オークションは、予備価格1スロットあたり$16,000,000(US$) に設定されたが、2度の中断を経て2016年にライセンスが交付された。
オークション一覧は以下のWebサイトを参照
https://www.ncc.gov.ng/%E3%80%80%E3%80%80spectrum-auctions
800MHz帯オークションの詳細は以下のWebサイトを参照
800MHz帯オークションの結果は以下のWebサイトを参照
2GHz帯オークションの詳細は以下のWebサイトを参照
2GHz帯オークションの結果は以下のWebサイトを参照
2.3GHz帯オークションの詳細は以下のWebサイトを参照
2.6GHz帯オークションの詳細は以下のWebサイトを参照
4. 電波使用料等について
放送免許は、国家放送委員会(改正)法の規定により定められ、具体的にはナイジエリア通信法(2003)周波数料金2004 (NIGERIAN COMMUNICATIONS ACT (2003 No. 19)FREQUENCY SPECTRUM (FEES ANDP RICING,E TC.) REGULATIONS 2004)により、5地域に分けられたライセンス領域に定められた1MHz帯域毎の単価(₦300,000~₦6,000,000)(約9万~180万円) に、低周波数帯は大きく高周波数帯は小さく最大12から最低0.5までの範囲で設定されているバンドファクター係数、3.5MHz帯域の係数を1とし、3.5MHz幅刻みで設定されている帯域幅係数、長期になるほど割安になるライセンス期間係数等により算出される。更に2007年より料金体系がClass LicenseとIndividual Licenseの2つにグループ分けされている。
国家放送委員会(改正)法1999年第55号(NationalBroadcasting Commission (Amendment) Act No. 55 of 1999) の詳細は以下のWebサイトを参照
http://www.lawyard.ng/wp-content/uploads/2016/01/NATIONAL-BROADCASTING-COMMISISION-ACT.pdf
ナイジエリア通信法(2003)周波数料金2004(NIGERIAN COMMUNICATIONS ACT (2003 No. 19) FREQUENCY SPECTRUM (FEES ANDP RICING,E TC.) REGULATIONS 2004)の詳細は以下のWebサイトを参照
ナイジエリア通信委員会(NCC) により定められているClassLicenseの料金一覧は以下のWebサイトを参照
https://www.ncc.gov.ng/licensing-regulatory/licensing/fees-pricing#class-license
ナイジエリア通信委員会(NCC) により定められているIndividualLicenseの料金一覧は以下のWebサイトを参照
https://www.ncc.gov.ng/licensing-regulatory/licensing/fees-pricing#individual-license
ライセンシーの一覧は以下のWebサイトを参照
https://www.ncc.gov.ng/licensing-regulatory/licensing/licensees-list#sales-amp-installation
5. その他資料等
・監査機関等
ケーブルテレビや衛星テレビ放送等を含むテレビ放送及びラジオ放送等の放送内容に関する監視及び監督と放送コードの策定、放送事業者に対する免許の付与や変更等の諸手続は国家放送委員会(NBC) が行い、周波数割当や電波利用状況の監視と調整及びオークション等はナイジェリア通信委員会(NCC) が行う。
(※リンク先が調査時(2017~2018年)から変更になっている場合は、各機関のHPルートに接続します)
世界主要国の通信放送等に関する調査報告書 39
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