26.アルゼンチン
1.報道内容に対する監視機構と罰則規定等について
改正連邦視覚通信サービス法(SCA)に、メディアによる違法的、有害的な内容に対し適切な処置を講じるとの規定が設けられている。また、報道も含む情報社会全体に対し個人情報の保護と共通の利益の促進と共に、平和の遵守、自由・平等の尊重と、人種差別の禁止、嫌悪や憎悪、暴力、児童ポルノ等も含む様々な児童虐待、人身売買や奴隷化等の禁止等の基本的人権に対する価値の維持と健全な社会の推進のため必要な処置を講じるとの規定がある。具体的には同第70条で、人種、肌の色、性別、言語、宗教、政治的意見またはその他に由来する差別的な扱いを推進することや、扇動、国家及び出自・財産・外見・障害等による人間の尊厳の毀損、 健全な環境や健康に対し害する行為等の禁止が明記されている。
また、人権の尊重や倫理原則の枠組みの中で、検閲を受けることなく情報や意見・考えを表明可能であるが、それらの表明には多様な意見等を適切に反映する必要性も記されており、それらの維持のため独立した規制機関や監視機関(視聴覚コミュニケーション連邦評議会やオンブズマン等)の設置も規定されている。
報道機関は違反や苦情に対し必要な行動をとる義務があり、管轄当局や利害関係者、報道機関等に対し違反や苦情に対する調査結果が公開されるほか、報道機関は苦情等の記録を保管する義務が課せられている。
また、プログラムは一定割合自国内の者である必要があり、同法第65条によりテレビ放送に於いては、自国内制作のプログラムの比率が最低でも60%である必要があり、更に地域情報が30%以上である必要がある。
ラジオ放送に於いても、同法第65条により自国内制作のプログラムの比率が最低でも70%である必要があり、放送内の音楽も30%以上が自国内制作のものである必要がある。更に、地域情報が50%以上含まれる必要がある。
州政府や自治体による放送に於いても自国内制作プログラムの比率が最低でも60%を占める必要があるほか、教育及び文化的なプログラムが最低20%含まれる必要がある。
更に、同第68条及び子どもの権利に関する条約(法律第23849号) (Ley Nº 23.849) に基づき、青少年の保護を目的に午前6時から午後10時までの時間帯に放送されるプログラムは全年齢層に適合したプログラム内容である必要があり、それ以外の時間帯に放送されるプログラムに於いても、プログラム開始時に対応カテゴリーについて視覚的に十分認識可能な表示を行う義務がある。
広告についても様々な規定がある。同第81条により、広告はプログラム本体から容易に識別可能である必要があるほか、広告の音量をプログラムより上げることの禁止、サブリミナル効果の禁止と、プログラムと同様に国籍、人種、民族、性別、思想等の差別的な表現及び、道徳や宗教的信念に対する侮辱的行為等の禁止、アルコールや煙草等の消費を推奨する広告の禁止、広告の時間及び回数制限等が定められている。
改正連邦視聴覚通信サービス法(Ley 26.522. Regúlanse los Servicios de Comunicación Audiovisual en todo el ámbito territorial de la República Argentina. SCA)の全文は以下のWebサイトを参照
http://servicios.infoleg.gob.ar/infolegInternet/anexos/155000-159999/158649/norma.htm
※改正連邦視聴覚通信サービス法には、文化多様佐や人権の保護等について世界人権宣言やユネスコ文化多様性条約等の内容が取り込まれている。
※本法律により制定された連邦オーディオビジュアル通信サービス局 La Autoridad Federal de Servicios de Comunicación Audiovisual (AFSCA)は、国家近代化省( Ministerio de Modernización) 配下の連邦通信局(Ente Nacional de Comunicacións Enacom)に改編されている。
オンブズマンについての規定(法律第24284) (Ley Nº 24.284) に関する詳細は、以下のWebサイトを参照
http://servicios.infoleg.gob.ar/infolegInternet/anexos/0-4999/680/norma.htm
子どもの権利に関する条約の承認(法律第23849号)(Ley Nº 23.849 Apruébase la Convención sobre los Derechos del Niño) は以下のWebサイトを参照(内容は国連子ども権利に関する国際条約と同一である)
http://servicios.infoleg.gob.ar/infolegInternet/anexos/0-4999/680/norma.htm
2. 監査機関と管理体制について
・連邦通信局(EnteNacional de Comunicaciones Enacom Enacom)
放送を含む電波及び通信等の管理は、国家近代化省(Ministeriode Modernizacion) の配下の連邦通信局(EnteNacional de Comunicaciones Enacom Enacom) に統合されている。インターネット、固定電話、携帯電話、電波放送、郵便等の規制・管理等を総合的に行う。
※アルゼンチンの電気通信分野における管轄省庁や管理体制等は数年で改再編されることが稀ではなく、連邦通信局(Enacom)以外にも様々な省庁や組織により管理や運営の一部が分化されている。以下にその一例を示す。
・近代化省コミュニケーション庁(Secretariade Tecnologias de la Informacion y las Comunicaciones)
https://www.argentina.gob.ar/comunicaciones/institucional
・視聴覚コミュニケーション連邦評議会
公共放送政策設計、入札等のガイドライン等。
・視聴覚コミュニケーションと子供の諮問委員会
子供に有益なコンテンツの推進。子供に有害なコンテンツの指摘、ディジタルディパイド克服のための青少年の情報技術と知識及び能力の機会均等化等。
参考資料:アルゼンチン共和国 通信レポート(総務省)
http://www.soumu.go.jp/g-ict/country/argentine/pdf/054.pdf
3. 外資規制等について
連邦視聴覚通信サービス法第24条により、放送免許の所持者はアルゼンチン国籍かアルゼンチン帰化後5年以上が経過している必要があり、更に資金元の証明等が必要である。
また、文化遺産保全の法律第25,750号により、国家の戦略的利益を保護するため、芸術や文化的遺産、科学技術や高度な研究による国の発展に必要な企業及び国防に重要な活動を行う企業、電波及び通信等と共に、新聞、雑誌、出版社、放送サービス、ディジタルコンテンツ制作者、インターネットプロパイダ等への外国資本(外国人資本及びそれらにより直接的・間接的に支配されている国内外の法人)の出資比率及び議決権は上限30%と定められている。
更に、多国籍企業のマルチメディア部門、特にインターネット等による配信がメディアの多様性に脅威を与えているため、メディアの多様性保護のため制限の設定が可能であることが改正連邦視聴覚通信サービス法(SCA) に定められている。
文化遺産保全の法律第25,750号の全文は以下のWebサイトを参照
http://servicios.infoleg.gob.ar/infolegInternet/anexos/85000-89999/86632/norma.htm
(※リンク先が調査時(2017~2018年)から変更になっている場合は、各機関のHPルートに接続します)
世界主要国の公共放送を中心とした監視機構と罰則抜粋 27
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