33.ノルウェー
1.報道内容に対する監視機構と罰則規定等について
報道機関に対する定義と規制内容は、1992年に施行され、2005年に改正された放送・視聴覚サービス法(Lοv om kringkasting og audiovisuelle bestillingstjenester) (通称 放送法(kringkastingsloven) )により規定されている。
放送事業者は、同第2条5により、放送後最低でも2ヶ月間の番組録画の保存義務があり、同第5条の規定により、番組内の不正確な情報等によって正当な利益が侵害された個人または法人は、その情報を是正する権利を有する。その権利の行使は、放送後3ヶ月以内に当該放送事業者に提示する必要がある。また、放送事業者はその際に監督機関に番組記録を譲渡する義務を有する。
放送内容については、同第2条7で、未成年者の身体的・精神的・道徳的発達を損なう可能性のある番組、特にポルノや暴力を伴う番組の送信は規制され、これらに該当する番組または品目を含む番組は未成年者が通常の状態で視聴しないような時間帯にのみ送信可能であり、該当番組が通常の形で放送される場合は、音声及び視覚的に警告を表示する必要がある。
なお、未成年者保護については文化省管轄であり、未成年者の有害なイメージプログラム等に対する保護に関する法律(Lov om beskyttelse av mindreårige mot skadelige bildeprogram mv)(通称 ピクチャープログラム法(Bildeprogramloven))により詳細な規定が設けられているほか、悪意のある画像プログラムに対する未成年者の保護に関する規則(Forskrift om beskyttelse av mindreårige mot skadelige bildeprogram) により保護されているが、これについての詳細は後述する。
また、ノルウェーは、アイスランド、リヒテンシュタイン、スイスと共に欧州自由貿易連合(European Free Trade Association EFTA) に属し、また、EU加盟28ヶ国及びスイスを除く欧州自由貿易連合(EFTA)加盟国は欧州経済地域(European Economic Area EEA) に属しているため、放送事業者も放送・視聴覚サービス法第2条9の規定により欧州経済地域(EEA) 協定の放送指令に基づく規制を遵守する義務を有するほか、同第2条17により欧州経済地域(EEA)による規制は国内法や国内規制等により妨げられない。
これらの規制等についての監督のために監督機関が情報を必要とした場合、同第2条11の規定により、放送事業者は情報の提供する義務を有するほか、同第2条16の規定により情報事業者は視聴者に対し、住所や電子メールアドレス等の直接的かつ簡単に連絡ができるようにする義務を有する。
広告については、同第3条1で規定され、広告時間の総計は毎日の放送時間の15%を超えてはならないほか、信念や政治的宣伝を目的とする広告も禁止されている。また、子供番組での広告の放映は禁止され、子供を対象とした広告も禁止されている。
広告は、同第3条2により原則として番組と番組の聞に放送され、特別な音響効果及び視覚効果を用い、通常の番組と容易に区別が付けられる必要がある。更に、同第3条3により隠密広告やステルスマーケティング等を含む放送や、視聴者が誤解する可能性のある広告の放送は禁止されている。
スポンサー付の番組では、同第3条4により番組の前や後ろにスポンサー情報を名前や商標、ロゴ等で提供する必要があるほか、スポンサーの製品やサービス等を番組中で宣伝してはならない。なお、ニュースや時事番組は同第3条5の規定によりスポンサーを付けることが禁止されているほか、政治政党及び、法律で広告が禁止されている製品またはサービスの製造・販売等を主業務とする人或いは法人は、番組のスポンサーになることが禁止されている。
番組放送中に存在した虚偽情報の結果正当な権利を侵害された人及び法人は、同第5条1により番組放送後3ヶ月以内に放送事業者に申し立てを行う権利を有する。
放送事業者に対する罰則等の規定は同第10条に定められており、同第10条1で故意または重大な過失、及び反復的な違反等について最長6ヶ月の刑罰または懲役が科せられる場合があり、事業利益の促進を目的とした違反や、事業が当該違反の恩恵を受けている場合は罰則が更に重くなる場合がある。また、警告に関しては同第10条2に、罰金や履行義務に関する差押え等は同第10条4に規定され、更に広告送信の禁止や、重大な違反が反復される場合に対する放送免許取消等は同第10条5に規定されている。
・未成年者の有害なイメージフ。ログラム等に対する保護に関する法律(Lov om beskyttelse av mindreårige mot skadelige bildeprogram mv) 通称 ピクチャープログラム法(Bildeprogramloven) )について
同法は、18歳未満の未成年者を対象とし、対象者を有害なイメージプログラムの影響から守ることを目的とし、放送法の対象となる放送番組及び広告、視聴覚サービス等だけではなく、映画を含む一般に視聴可能な映像プログラム及び映画館等の公開会場、ディスクや磁気テープ等の含む映像プログラムの記録されたメディア等を含む様々なコンテンツに対して規定している。
有害コンテンツ(skadeliginnhold) とは感情的・刺激的で、青少年に悪影響を与える可能性のあるコンテンツと定義されており、これらに加え更に差別的・暴力的、その他感情的不快感の強いもの、特にジェンダー活動、脅迫的暴力行為等を含むものは、深刻な有害コンテンツ(alvorligskadelig innhold) と定義されている。
番組は、同第4条により、全年齢対象と、6歳未満、9歳未満、12歳未満、15歳未満、18歳未満の6段階の年齢制限の分類があり、深刻な有害コンテンツについては18歳未満の年齢制限が課せられ、映画については同第5条によりメディア庁(Medietilsynetog) による事前有料審査により決定され、審査を受けない映画は、映画祭及び類似文化行事等以外においては18歳未満制限が掛かるほか、刑法第236条、311条、317条に違反すると考えられる映画については年齢制限の設定ができない規定がある。
テレビ番組放送び於いては、同第7条により放送事業者は番組開始前に年齢制限を告知する義務があり、また、番組リストや電子番組ガイド等で年齢制限を利用可能となるように配慮する義務がある。更に、同第8条により番組視聴が可能な人は有害コンテンツや深刻な有害コンテンツから未成年者を保護するための適切な処置を講じる義務を有する。なお、テレビ番組放送では、深刻な有害コンテンツは同第9条により放送が禁止されており、有害コンテンツに対してはニュース及び時事プログラムを除き配信時間等に配慮する義務を有するほか、視聴覚オーダーサービス(オンデマンド放送等)に於いても、同第四条によりサービス提供者は未成年者が深刻な有害コンテンツにアクセスできないような処置を講じる義務を有する。
監督等については同第四条に規定されており、放送事業者が未成年の有害なイメージプログラム等に対する保護に関する法律に違反していないかどうかをメディア庁(Medietilsynet og) が監督すると共に、番組が刑法第311条を適用される違反をした場合は警察への報告が規定される。
放送事業者を含むイメージプログラム提供者は、同第14条によりプログラム公開後または利用可能となった後、最低2ヶ月間保存する必要があり、同第16条に従い苦情の申し立てを受けた場合、問題解決まではプログラムを保存する義務を有するほか、訴訟が提起された場合も判決が確定するまで保存する義務を有する。また、イメージプログラム提供者は、プログラムをメディア庁(Medietilsynetog)及びメディア控訴委員会(Medieklagenemnda) に提供する義務を有する。
違反については、同第四条によりメティア庁は放送事業者等の責任者に対し警告を与えることができるほか、同第四条により監督省庁は違反行為に関する罰金を科せることが規定されている。更に、同第20条によりメディア庁は同法に定めた義務が確実に履行されるために差押え等の強制的な処置をとることが可能であるほか、罰金未納に対する延滞金等を課すことが規定されている。
・悪意のある画像プログラムに対する未成年者の保護に関する規則(Forskrif tom beskyttelse av mindreårige mot skadelige bildeprogram)
未成年者の有害なイメージプログラム等に対する保護に関する法律と合わせ、有害な視聴覚メディアからの未成年者の保護を目的としているため、規制内容等に一部重複した内容が定められている。但し、当該法規は未成年にとって有害な視聴覚メディアを無制限に制限することを目的としているわけではなく、適切な管理を主目的としているため、非営利団体の会員イベントや視覚芸術展示等には適用されない。一般的な映画については同第4条による支払要件の免除に該当するものを除き、同第3条によりイメージプログラムの事前審査による手数料を支払う必要がある。
また、テレビ放送に関しては、同第5条により、視聴制限等の技術的対策を施していない場合は、ニュース及び時事番組を除き、未成年者の有害なイメージプログラム等に対する保護に関する法律に定める6段階の年齢区分のうち、6歳及び9歳までの年齢制限付きイメージプログラムについては24時開放映可能であるが、12歳の年齢制限のあるイメージプログラムについては19時~5時半まで、15歳及び18歳の年齢制限のあるイメージプログラムについては21時~5時半までの放映時間制限があるほか、同第6条によりオンデマンド放送に関しては未成年者が重大な有害コンテンツにアクセスできないように暗証番号やパスワード、その他防護措置を確立する必要がある。
メディア控訴委員会(Medieklagenemnda) は同第9条に定義され、育児、メディア、法律の専門家から構成されることが定められている。
違反に対する制裁金の規定は同第10条及び11, 12, 13条に定められ、第10条でメディア庁が違反に対する制裁金を課すことができる事、及び侵害の重大性、侵害により得られるメディア提供者の経済的利益、責任者の能力に重点が置かれ、侵害の重大性は違反した条項数及び違反回数等により評価される。なお、同条による制裁金は上限2,000,000NOK(約2700万円)に制限されている。なお、18ヶ月以内に違反を繰り返した場合は同第11条により制裁金を引き上げることが可能である。
責任者は同第四条により最終決定の通知後3週間以内に制裁金を支払う必要があり、遅滞した場合は更に利息が課せられるほか、支払を行わない場合は同第13条により強制義務(差押え)を課す場合があることが規定されている。
放送・視聴覚サービス法( 放送法(Lov om kringkasting og audiovisuelle bestillingstjenester) (通称 放送法(kringkastingsloven))についての詳細は以下のWebサイトを参照
https://lovdata.no/dokument/NL/lov/1992-12-04-127
未成年者の有害なイメージプログラム等に対する保護に関する法律(Lov om beskyttelse av mindreårige mot skadelige bildeprogram mv) (通称 ピクチャープログラム法(Bildeprogramloven) )についての詳細は以下のWebサイトを参照
https://lovdata.no/dokument/NL/lov/2015-02-06-7
悪意のある画像プログラムに対する未成年者の保護に関する規則(Forskrift om beskyttelse av mindreårige mot skadelige bildeprogram) についての詳細は以下のWebサイトを参照
https://lovdata.no/dokument/SF/forskrift/2015-06-26-800
メディアにおける所有権の透明性に関する法律(Lov om åpenhet ome ierskap im edier)についての詳細は以下のWebサイトを参照
https://lovdata.no/dokument/NL/lov/2016-06-17-64
2. 監査機関と管理体制について
・文化省(Kulturdepartementet)
放送分野に関する政策立案を行う。未成年者の有害なイメージプログラム等に対する保護に関する法律(通称 ピクチャープログラム法)および悪意のある画像プログラムに対する未成年者の保護に関する規則に基づき、未成年者保護を管轄する。
・メディア庁(Medietilsynetog)
文化省の一機関で、新聞・ラジオ放送・テレビ放送の免許交付を含むメディア全体の監視及び規制を行っている。ピクチャープログラム法の違反について、放送事業者等の責任者に警告を与えるほか、罰金や差し押さえ等の強制的な処置をとれるほか、刑法に反する番組を警察に報告する。
・メディア控訴委員会(Medieklagenemnda)
悪意のある画像プログラムに対する未成年者の保護に関する規則に基づき、育児・メディア・法律の専門家から構成される組織で、報道機関に対する苦情処理等を扱う。
・運輸通信省
電気通信の政策立案から研究開発、各種調査と国際間を含む調整等の電気通信分野全般を統括する。
・ノルウェ一通信庁(Nasjonal kommunikasjons -myndighet(Nkom))
運輸通信省の下部組織で、郵政及び電気通信分野の規制及び監督等を行う。
・国家通信委員会(Nasjonal komm unikasjonsmyndighet (Nkom))
同委員会の国家周波数利用計画に従い、ノルウェー郵政公社(Post-og teletilsynet (PT))が電波オークションを実施している。
・放送・視聴覚サービス法(Lοv om kringkasting og audiovisuelle bestillingstjenester) (通称 放送法(kringkastingsloven) )
報道機関に対する定義と規制を定めた法律。未成年者の身体的・精神的・道徳的発達を損なう可能性のある番組の規制や、放送それた番組内の不正確な情報等で正当な利益が侵害された個人又は法人の権利の擁護などが規定されている。
・欧州経済地域(European Economic Area EEA) 協定の放送指令に基づく規制
EU加盟28ヶ国及びスイスを除く欧州自由貿易連合(European Free Trade Association EFTA) 加盟国は、放送事業者も放送・視聴覚サービス法第2条9の規定により欧州経済地域(EEA) 協定の放送指令に基づく規制を遵守する義務を有する。欧州経済地域(EEA) による規制は、国内法や国内規制等により妨げられない。
参考資料:ノルウェー王国 通信レポート(総務省)
http://www.soumu.go.jp/g-ict/country/norway/pdf/047.pdf
(※リンク先が調査時(2017~2018年)から変更になっている場合は、各機関のHPルートに接続します)
世界主要国の公共放送を中心とした監視機構と罰則抜粋 34
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