「ウィグル情勢は、日本の保守勢力にとって有利になる情報が多いので報道したくない(意訳)」(文春オンライン)

要約

共産党China(中国)は国防費の1.2倍以上の治安維持費用を投じる監視社会になっている。中でもウィグルへの締め付けは特に厳しく、宗教の禁止・民族アイデンティティの破壊・通信の制限などの弾圧が行われている。もちろん、メディアへの制限も厳しく、取材対象への拘束・尋問もあり、取材が困難になっている。

日本国内では、ウィグル団体の多くが右翼・保守勢力と結びつき、右翼・保守勢力に忖度して話を誇張したり、右寄りの発言を行っている。

 オールドメディアとしては、右翼・保守に有利な証言や発言を行うウィグル団体ひいてはウィグル問題を取り上げたくない。

 

 中核派革マル派と言った左翼過激派が絡んで違法活動を繰り返す沖縄の反基地闘争は好んで取り上げるのに、国連や世界中のメディアが取り上げる重大な人権問題は「報道しない自由」で無視ですか?

 ダライ・ラマ法王は右翼・保守寄りの発言をしているとは感じられませんが、訪日すら報じないのは異常ではないでしょうか?

 些末な韓流アイドルの来日でさえ、ワイドショーなどで大きく取り上げるのに、チベット・ウィグルの弾圧・人権問題は取り上げない。つまり、チベット・ウィグルの人権問題は、韓流娯楽以下の扱いというわけですね。

--------------------------  文春オンライン 2018.11.13

 最近、中国が新疆ウイグル自治区でおこなっている少数民族ウイグル人への弾圧問題が、世界でのホットなトピックになっている。国連人種差別撤廃委員会は2018年8月末、最大100万人のウイグル人が強制収容所に入れられているとの指摘を報告。米中両国の政治的対立もあり、最近は米国系のメディアを中心に関連報道が続いている。

 

(中略)

 

 結果、近年のウイグル人への締め付けはいっそう厳しくなっている。中国は現在、「テロ防止」を最大の名目として国内の治安維持費用に国防費を約20%も上回る予算を投入、さらに国内に1億7000万台近い監視カメラを設置(2017年時点)したり、当局が国民のネット接続を監視したりする監視国家になっているが、その最大のターゲットはウイグル人と言ってもいい。

 

新疆は中国の治安機関の見本市

 

 いまや新疆は、のどかなシルクロードのイメージとは裏腹に、強力な監視・警備体制が敷かれる恐ろしい場所になっている。筆者が2014年春に訪れたときは、街のいたる場所に制服姿の治安維持要員が立哨したり巡回したりしており、城管・公安・武装警察・特殊警察……と中国の各種治安機関の見本市のようになっていた。これらは現在、いっそう深刻になっているようだ。

 また、近年の新疆では多くのモスクが閉鎖されるなど、ウイグル人はイスラム教の信仰を事実上禁止されるに近い状況に置かれており、公教育機関でも、ウイグル人としての民族的なアイデンティティを持ちづらい教育が行われているとされる。家族や親戚を含めて、国外にいる知人と連絡を取ることも容易ではないという。

メディアが直面する3つの問題

 

 むしろ問題なのは、いざウイグル問題について調べようとフタを開けてみると、中国の政治事情とはあまり関係がない問題に数多く直面し、精神力をいちじるしく消耗する点である。結果、ウイグル問題を1度くらいは取り扱ってみても、「次」にもう一度取り組もうという気にはなれない報道関係者も少なくないようだ。

 

 (中略)

 

1.中国政府からの取材妨害や情報の制限

 

2.在日ウイグル人民族運動と支援者の問題

 

3.他の日本人のウイグル・チャンネルの問題

 

「えげつない監視体制」

 

 まず「1.中国政府からの取材妨害や情報の制限」は想像が付くだろう。ウイグル問題は中国政府にとって、党の最高指導部の権力闘争と並ぶ重大なタブーだ。問題が現在進行形であり、かつ当局のコントロールが完全には成功していない点で、実は六四天安門事件や対日歴史認識問題よりも、ウイグル問題のほうが中国国内でのタブー度合いは高い。

 個人的な経験で言えば、2014年春ごろに中国国内にいる某新聞社の日本人記者と電話で話した際に、ウイグル問題に言及した瞬間に音声の雑音が増え、いきなり切れてしまったことがある。たとえ日本語の通話でも、中国のSIMカードを使った場合はばっちりリアルタイムで盗聴されているわけだ。

 ウイグル問題を取材しようと新疆に入る記者(報道ビザを持たない場合も含む)は行動を徹底的にマークされる。中国国内、特に新疆での携帯電話の通話内容やチャットソフトでの会話内容もすべてチェックされている。また街のあちこちにある監視カメラの画像も、顔認証技術を応用して解析されている可能性が高い。現代の新疆で、外国人の取材者が当局に捕捉されずに誰かと会って話を聞く行為は事実上不可能に近い。

ちょっと不満を漏らしただけで収容所送り?

 

 しかも、滞在中に接触した現地のウイグル人は、その後に高確率で当局による尋問や拘束を受ける。話を聞く相手が確実に当局に特定され、さらにその後で拘束される可能性が高いとなると、コメント取りが重要になってくる大手メディアの現地取材はかなり難しいと考えていい。

 加えて言えば、中国当局を過度に刺激するような取材をした場合、大手メディアの記者の場合はビザの延長が難しくなったり、中国支局に圧力が掛かったりする。フリーランスの場合は今後の入国自体が禁止される可能性も出てくる。当然、他の問題と比べて、日本のメディアがウイグル問題を取り扱うハードルは高い。

 それでも近年の日本メディアは、『朝日新聞』やNHKなども含めて、実は世界規模で見てもウイグル問題の取材に積極的なほうだ。だが、記者本人が新疆に立ち入るような取材は、監視体制が現在よりはユルかった2014~15年ごろまでは多かったものの、近年は減った印象がある。

 2018年現在は、ウイグル人がちょっと生活上の不満を漏らしただけで収容所送りになるという話もあり、現地取材はほとんどできなくなっている。

右翼勢力の影響が強すぎる「在日ウイグル人民族運動」

 

 もっとも、中国当局による妨害は想定内の話だ。むしろ、次に紹介する「2.在日ウイグル人民族運動と支援者の問題」のほうが、現実が想像の斜め上を行っているという点で、心理的負担が大きい問題だとも言える。

 過去、ウイグル人の海外渡航・海外留学が比較的難しくなかったゼロ年代ごろまで、日本は彼らの留学先として人気がある国だった。在日ウイグル人の留学生やビジネスマンのなかには政治的な考えを持つ人たちも存在していた。

 2008年春ごろ、彼らの一部は日本国内で民族運動の組織を立ち上げる動きを見せ、世界規模の団体である世界ウイグル会議(WUC)もこの動きを支持した。その後、「1人1組織」みたいなものも含めて、現在までに日本国内で複数のウイグル民族運動団体が成立している。

 だが結論から言えば、これらの団体の多くは結成当初から日本国内の保守・右翼系勢力との関係が深かった。戦前からのルーツを持つような伝統右翼系の勢力と、『日本文化チャンネル桜』のようなネット右翼系イデオロギーを持つ後発勢力の双方が影響力を及ぼしていたのだ。また、いわゆる宗教保守系の新宗教団体もここに接近している。

支持勢力に「忖度」するウイグル人活動家

 

 現在、日本国内でのウイグル人民族運動の主流は2012年当時とは別の団体に移り、彼らがWUCの事実上の出先機関になっているが、やはり右翼系の勢力との関係は確認できる(ちなみにウイグル人は、世界組織のWUCも日本国内の民族運動関係者も離合集散が激しく、お互いに足を引っ張ったり誹謗中傷を繰り返すような傾向も強いため、こちらもかなりウンザリする)。

 日本でのウイグル人の民族運動の多くは、2008年の発足当初から「反中国」を理由に右翼・保守勢力と共闘する形を取っている。こうした団体に関係している在日ウイグル人活動家には、日本人支援者への忖度もあるのか、ウイグル情勢について過剰に話を演出したり、日本国内の特定の政治思想におもねるような言説を繰り返す例も少なくない。

 

「反中国」のアイコンにされてきた歴史

 

 もちろん、右翼でも左翼でも宗教団体でも、深刻な人権問題を解決するために行動しているなら構わない、カネや政治力を持つ組織と亡命ウイグル人が共闘するのも仕方ないという見方もある。

 ただ、過激な右翼色や新宗教色が強い勢力がバックに控え、ウイグル人活動家自身も支持者の政治的主張をコピーした言動を繰り返したり、新宗教団体の広告塔に使われたりしているとなると、報道が極端なイデオロギーや新宗教思想の宣伝につながることを懸念する一般メディアや記者が取材を手控えるのも納得できる話ではある。

 ついでに言えば、日本においてウイグル問題は長年にわたり右翼・保守勢力の主張のパッケージに組み込まれ、「反中国」のアイコンにされてきた歴史があるので、ネットで「ウイグル」を検索するとネット右翼的な人たちのツイートやブログ・YouTube動画ばかりが引っかかって、扇動的な情報が異常に多く表示されるという問題も起きている。

 

  (以下略)

-------------- CNN News 2018.11.16

中国、西側の「干渉」に怒りあらわ

ウイグル問題の説明を求める西側諸国からの公式書簡 

 

北京(CNN)

 中国の少数民族ウイグル族に対する人権侵害が報告されている問題をめぐり、同国政府は15日、西側諸国の外交官15人が起草したとされる関連の公式書簡について、他国への「干渉」に当たると強く反発する姿勢を示した。 

 中国外務省の華春瑩副報道局長は同日の記者会見で、依然として続く新疆ウイグル自治区での人権侵害の説明を求めた上記の外交官らに対し「干渉」ではなく「前向きな役割」を果たすべきだと苦言を呈した。そのうえで「なぜ彼らが新疆の状況に懸念を抱くのかが分からない。なぜこの種の要求を通じて中国に圧力をかけたのだろうか。この種の行動は極めて不合理だと考える」と批判した。 

 ロイター通信が報じたところによると、西側諸国の大使15人が起草したという書簡は、陳全国・新疆ウイグル自治区党委書記と会談し、イスラム教徒が大半を占めるウイグル族の処遇について説明を求めたいとする内容だった。 

 国際社会ではこの数週間で、中国に対する圧力が拡大。世界的に報道されたウイグル族への弾圧を止めるよう要求する声が広がっている。 

 

 CNNは書簡の写しを入手しようと各大使館に連絡を取ったがこれまでのところ返答はなく、書簡に関するコメントも得られていない。 

 

中国外務省の華副報道局長は、政府の見解として外交官らが新疆を訪れるのは認めるものの、それによって地方政府に「圧力をかける」ことには反対すると強調。「この種の行動は外交関係に関するウィーン条約の規定を超えていると思う」「もし彼らが、悪意と偏見によって地方政府の問題に干渉しようとするなら、あるいは根拠もなく中国を非難しようとするなら、我々は断固としてこれに反対する」と述べた。 

 文春オンラインの記者・安田 峰俊氏は、記事の最後を「国内外のウイグル人活動家が離合集散を繰り返したり、日本の政治勢力や新宗教勢力がウイグル問題を利用したり、その他もろもろの面倒な問題がグダグダと起き続けている間にも、新疆の人権状況は加速度的な悪化を続けている。中国の最深部で進んでいる強制収容所の建設や文化の抹殺は、とにかく心が痛い。」と結んでおられます。

 少なくとも、前半でウィグル(東トルキスタン)に対するChina共産党の非道な行為をまとめ、報告して下さっていることは、まったくウィグル問題を報じない日本のマスコミ界にあって高く評価したいと思います。

 

 しかし、それだけ苛酷な弾圧が行われているウィグルの人々が、Chinaに対して無防備な日本に対して国防の必要性やChina共産党への警戒の必要性を説くのは、彼らの経験から考えて当たり前ではないでしょうか?

 それを「右翼・保守勢力への忖度」で「ウィグル問題の報道が極端なイデオロギーの宣伝」に繋がる・・・・などと決めつけて、「報道しない自由」を行使するのは、自分達の政治思想を日本国民に押し付けるためにメディアを使って言論統制しているのと同じです。

 少なくとも、CNN位は報道できるのではありませんか?