第2部 (5).番組制作 2

番組制作のコスト

おさらい

 

現在のテレビ番組はテレビ局では作らず下請けに出され、ポストプロダクションで制作される番組は話でした。

 

超高価な撮影機材

 

 昔、仙台の山の上の放送局の玄関横には大きな車庫があって、バス3台が入っていました。私が小学生のころ、その車庫からバスが出ているのを見ました。父にこのバスは何かと聞いたところ、「中継車だ。」と言われ、「3台もあるの?」と聞いたら、1台は電源車、1台は中継器のみ、3台目に機材が積んでいるということでした。カラー化が進みだした時代でしたがモノクロの初期型テレビ中継車でした。

 昭和40年代後半にはカラー化も進み、モノクロ番組がなくなってしまいましたが、この中継車は昭和50年前台前半まであったようです。

 この時期、マイクロバス1台程度のカラー中継車が買い足されました。小型化が進んだのです。でも、モノクロの中継車は減価償却が終わらないからなのか、その後も車庫にあって最後の数年は出番がなかったと記憶しています。

 でもこの中継車、1度だけ稼働してるのを見たことがあります。放送局主催の夏祭りイベントで展示物(テレビ中継体験?)として出ていました。大きなモノクロのテレビカメラが印象的でした。

 

 そう、昭和20~30年代の放送機材は大きく、値段も非常に高いものでした。スタジオセットも高価で、当時の番組コストは、俳優・アナウンサーよりも機材の部分が圧倒的に高かったと思われます。番組制作は当時の一般人には手が出せなかったのです。

 さらに、昭和30年代後半にはビデオが導入されました。これも高価なものでした。家庭にビデオが普及し出した昭和50年代でも、高画質の業務用、U-マチックやベータカムは高価でした。(ビデオ、カメラとも1台数十万~200万円程度)

 

 「撮影」に対するコストは非常に高かったのです。

撮影機材の低廉化

 

 で、この状況が変わったものが、SONYのHi8の登場あたりからです。

 当初、家庭用ビデオの画質はあまりよくありませんでした。しかし、その後の改良で画質が上がり、見るに耐える画質になっていったのです。

 

 平成1ケタ後半のころですが「進め!電波少年」という番組でユーラシア大陸をヒッチハイクで横断する番組がありました。この番組のプロデューサーがHi8がなかったら番組が作れなかったといっていました。大掛かりな機材は使用できず、猿岩石2人と小型のHi8を持った撮影者の3人で旅をしていたようです。この辺が安い機材を使うはしりだったようです。

 

・番組制作のコスト

 さて、テレビ番組制作のコストはどのぐらいでしょう?

 ピンキリで何とも言えませんが、スタジオは、リンク先の料金で、機材使用料その他込みで120万~60万円/日 ですね。

  http://telecen.tv/business/studio/

 

 ビデオ編集は、業務用ビデオで編集スタジオ5時間で6万6千円。

  http://www.ibinet.jp/video/video_edit.html

 

 一般のビデオで、リンク先だと時間7千円。

  http://www.studiodouga.com/price/

 

 1本作るのに10~20時間ぐらいかな? 

  https://www.v-apex.co.jp/edit/flow.html 

 

 何度も打ち合わせ、変更を加えると制作期間が延びます。

  http://www.move-emotions.com/movie/qa/nouki.html 

 

 出演料が高いタレントを使わなければ、1発編集で1本100万円ちょっとで上がりますね。

 

 リンク先の実際の制作費の例を見るとかなり豪勢です。プロダクションやタレントに支払われる分が大きいのでしょう。

 何度も編集をやり直すとかお金もかかります。

 http://getnews.jp/archives/99816

 

安い番組だと

 

・おかあさんといっしょ 320万円

・きょうの料理      170万円

 

本当に必要な制作費このぐらいでしょう。何千万もかける必要はないのです。

 さて、話は変わりますが、あなたがきょうの料理を作ってYoutubeに上げるとしたらいくらかかるか?

 

業務用のビデオカメラは最低でも数十万はします。

 でも、多少見劣りはするものの最近のデジカメは高性能です。デジカメは3万円で買えます。

 http://trendy.nikkeibp.co.jp/article/pickup/20100809/1032606/

 

出演者は素人、タレントは必要ありません。

 

スタジオは時間貸しです。

ウィークリーマンションでも借りましょう。ただし、雑音が入らない場所という条件が必要ですが。

自宅でもOK。料理でなければ、一般のスタジオを借りてもいいかも。

 

レンタルスタジオ

 https://www.echigoyastudio.jp/price/

レンタル音楽スタジオ 

 http://www.st-ongakukan.com/shibuyaekimae/pr.html

 

編集スタジオは時間貸しです。編集はフリーソフトとパソコンで。

 【2017年版】PC向け動画編集ソフトおすすめ7選

 

かかる経費は事実上材料費ぐらいです。千円単位ですかね。

 

料理、撮影、編集に人を雇ったとしても、1本10万円も行かないでしょう。内容はNHKと同じですよね。

 

デジタル機器はコピーしても画質が劣化しません。実際、Youtubeの動画や携帯撮影の動画がよくテレビで流れます。テレビ番組にはもはや、高い機材は必要ないのです。

 

技術革新(=デジタル化&データ処理の高速化)でやろうと思えばコストが劇的に下がるのです。

 さて、みなさん、月光仮面って知っていますよね。テレビ放送初期の番組です。当初は予算不足で、撮影はゼンマイ式の16ミリフィルムのカメラ1台のみ。フィルム1本で28秒しか撮影できないものでした。でも、それで作った番組は伝説になりました。

 

家で片手間で見ているテレビ番組に高い経費をかける必要があるのか?。映画など料金を取って見せるものとは根本的に違います。本当に番組制作に必要な質、経費を考える必要があると思います。

 

次回は、番組の信頼性とYoutubeとの差別化です。

・おまけ 地方局物語 (2).番組制作のノウハウ研修

 このコーナーでは、父に聞いた放送局のエピソードや思い出をいくつか紹介します。

 

 父は、定期的に東京のキー局に出張していました。私が育つころには、年に1回あるかないかでしたが、テレビ放送開始時は年に何度も行っていたそうです。当時、テレビスタジオやカメラの使い方などの研修が東京のキー局で行われていたのです。番組が自社制作だった時代、地方局のテレビクルーは東京で研修したのです。

 

 それでは、東京のキー局のクルーはどこで研修?・・辿ってゆくと、ハリウッドにたどり着きます。アメリカの3大ネットワーク局は、テレビ放送開始時に、ハリウッドでスタジオ、カメラの等の研修を受けたのが始まりとのことでした。

 

流れは、

 

1.アメリカの3大ネットワークのクルーがハリウッドで研修(テレビカメラについては独自のノウハウを作ったと思われます)。

2.NHKのクルーがアメリカに海外渡航して研修

3.東京のキー局のクルーがNHKで研修

4.地方局のクルーが東京のキー局で研修

 

 の順でした。

 

この後、放送局をやめた人たちがポストプロを設立しノウハウを作っていったようです。